仕掛人・藤枝梅安

 池波正太郎氏の余りにも有名なシリーズ小説で、TV化は勿論映画化もされています。 「鬼平犯科帳」や「剣客商売」とならぶ人気シリーズで、金づくで人を殺すことを商売にしながら一方では腕の良い針医者として人助けをする藤枝梅安を主人公に鬼平犯科帳などとは逆に悪の世界からの物語が展開しています。(でも、実際はさほど悪という感じはしませんが・・・)


作品一覧 登場人物 梅安、仕掛け旅 食道楽
≫≫ 池波 top ≫≫

仕掛人作品一覧

             
文庫題名収録作品名
殺しの四人
ころしのよにん
おんなごろし 殺しの四人 秋風二人旅 後は知らない 梅安晦日蕎麦    
梅安蟻地獄
ばいあんありじごく
春雪仕掛針 梅安蟻地獄 梅安初時雨 闇の大川橋      
梅安鰹飯
ばいあんかつおめし
梅安鰹飯 殺気 梅安最合傘 梅安迷い箸 さみだれ梅安    
梅安針供養
ばいあんはりくよう
銀杏落葉 白刃 あかつきの闇 その夜の手紙 地蔵堂の闇 寒鯉  
梅安乱れ雲
ばいあんみだれぐも
梅安雨隠れ 梅安乱れ雲 寒鴉 凶刃 東海道の雲 瀬戸川団子 薬湯と白飴
梅安影法師
ばいあんかげほうし
殺気の闇 三人の仕掛人 稲妻 春雷 逆襲 菱屋の黒饅頭  
梅安冬時雨
ばいあんふゆしぐれ
鰯雲 師走の闇 為斎・浅井新之助 左の腕 襲撃    



主な登場人物

藤枝梅安  品川台町に住む鍼医者。 寛政11年 (西暦一七九六年)で三十五歳歳であるが、見ためには四十を超して見える。
 助手や女中も置かずに一人暮らしであるが、 掃除や洗濯には近所の百姓の老婆が通ってくる。 六尺に近い大男で、団栗のように小さい両眼、大きく張り出した額。普段の動きは 緩慢で鈍い。 近所で腕の良さは評判になっている。金が無くとも治療は行うが、手におえないと判断した患者には見向きもしない。 以上は表の顔。裏の顔は・・・。

彦次郎 塩入土手に住み楊子つくりを職にしている男。 50歳を過ぎているが梅安と何故か気が合うらしくしょっちゅうつるんでいる。  楊子作りでも十分生活できる腕を持っているが、「裏の仕事」を持っている。




梅安、仕掛け旅


 仕掛け人藤枝梅安の裏の仕事。 金を得て人を殺す。はたして、彼は幾人の人間を手に掛けたのだろうか・・・。

   
仕掛人相手起り事情題名
梅安・針料理屋・万七の
前女房 おしず
現女房
おみの
羽沢の嘉兵衛
(本所・両国)
 本編開始の三年前の仕掛け 金五十両おんなごろし
梅安・針料理屋・万七の
現女房 おみの
?赤大黒の市兵衛
(赤坂・田町)
 おみのは梅安の実妹であったらしい 金七十両おんなごろし
梅安・針久留米家
 伊藤彦八郎
? 羽沢の嘉兵衛
(本所・両国)
 金百五十両 殺しの四人
梅安、彦次郎
・毒、針
浪人
井坂惣市他五人
松平家
峯山又十郎
白子屋・菊右衛門
(大阪道頓堀界隈)
 彦次郎の敵を仕掛ける 金二十両 秋風二人旅
梅安・針浪人
金子又蔵
?白子屋・菊右衛門
(大阪道頓堀界隈)
 金子は病死したが梅安は金子の追っ手三人を仕掛けた 金百両後は知らない
梅安・針浪人
石川友五郎
御側衆
嶋田大学
人入家業
田中屋・久兵衛
 彦次郎が友五郎の仕掛けを依頼されたが蔓の嘘を知り、 嶋田大学とともに逆に仕掛ける 前金二十五両のみ梅安晦日蕎麦
梅安・針旗本
川村佐十郎
札掛・吉兵衛
(本郷、下谷)
 金八十両梅安仕掛針
彦次郎・吹き矢仙石家
本間左近
札掛・吉兵衛
(本郷、下谷)
 直接の依頼で仕掛けたのではないが、結果的に依頼を果たす仕掛になった 後金百五十両 春雪仕掛針
梅安・針蝋燭問屋
伊豆屋・長兵衛
札掛・吉兵衛
(本郷、下谷)
 小杉十五郎と協力して仕掛ける 金百両 梅安蟻地獄
梅安・針、短刀片桐家家来
他 七人
無し無し  小杉十五郎を追う武士七人を仕掛ける 金の絡まない仕掛 梅安初時雨
梅安・不明不明
二条城の住人
白子屋・菊右衛門
(大阪道頓堀界隈)
 百両 梅安初時雨
梅安・針旗本 安部長門守
主税之助
安部長門守->近江屋佐兵衛音羽の半右衛門
(小石川、雑司ヶ谷)
 西村左内が初登場 金七十両+α 闇の大川橋
梅安・針音羽の
半右衛門
近江屋佐兵衛->大井の駒蔵萱野の亀右衛門
(元・目黒、渋谷)
 お互いに相手を仕掛けたい両方の依頼を受ける 半衛門は芝居で死んだ事にし、 駒蔵を仕掛ける 金百五十両 梅安鰹飯
梅安・針大井の駒蔵 音羽の半右衛門無し  お互いに相手を仕掛けたい両方の依頼を受ける 半衛門は芝居で死んだ事にし、 駒蔵を仕掛ける 金百両 梅安鰹飯
無し無し 無し無し  仕掛のない珍しい一編 殺気
梅安・針浪人
林又右衛門
吉野屋・久蔵水茶屋玉屋
稲荷の七兵衛
(品川)
 彦次郎が受けた依頼だが梅安と二人で仕掛ける 七兵衛も仕掛ける 金百両 梅安流れ星
梅安・短刀浪人
井坂権八郎
無し無し  誰の依頼でもなく梅安の伊野との恩人を仕掛ける 梅安最合傘
梅安・針紀伊家
川村甚左衛門
音羽の
半右衛門
 仕掛をした梅安は初めてその現場をみられてしまう 金百五十両 梅安迷い箸
梅安・針橘屋忠兵衛  目撃した女中を殺害した主人を仕掛ける 梅安迷い箸
梅安・針伊藤屋
お信、儀兵衛
白子屋・菊右衛門
(大阪道頓堀界隈)
 仕掛を依頼された小杉に代わり梅安が仕掛ける 金五十両 さみだれ梅安
梅安・針旗本池田家
奥方・信子
旧出入商人萱野の亀右衛門
(元・目黒、渋谷)
 自分の子に家を継がせる為に暗躍した奥方と長男を仕掛ける 金三百両 梅安針供養
梅安・針旗本青木家
小島伝七郎
無し無し  恨みを持っていた浪人に代わりに敵をうつ 梅安雨隠れ
梅安・針白子屋
菊右衛門
無し無し  金を受けての仕掛けはないが、仇敵・白子屋菊右衛門をうつ。
 (余談) 梅安と菊右衛門の戦いのクライマックスになる。 これに音羽の半右衛門や菊右衛門の仕掛け人・田島一之助が絡んで長編になっている。田島が味わいのある良い表現をされている
梅安乱れ雲
梅安・針線香問屋
作兵衛
料理屋
草加屋金蔵
 本編の冒頭での仕掛けだが詳細は不明。なお、本編のメインは菊右衛門の残党との戦いである
本編は未完のまま絶筆となる
梅安影法師




食 道 楽
Last update 99.04.11

藤枝梅安は今風に言うグルメである。食に対する知識が豊富であり、味や盛り付けや食事を食べさせる店についても煩い。
これは長谷川平蔵はもとより 秋山小兵衛よりも上である。美味そうなtabemonoが沢山出てくる。本が一冊書けそうである。
(現実に「梅安料理ごよみ (著:佐藤降介・筒井ガンコ堂)」なる本もある。)

沙魚の煮付け

[おんなごろし]
第一話の冒頭に出てくる食べ物。 金の無い患者の差し入れである。

「見事に太った沙魚が十余尾、ざるに入って台所に置かれてあった。」・・・ 「鍋を強火にかけ、生醤油に少々の酒を加え、これで沙魚をさっと煮付けて・・・すぐさま食べはじめた。」
大根と油揚げの鍋

[殺しの四人]
梅安が彦次郎のために料亭「井筒」に注文したものである。

「彦さんが食べなくてはいけないものを、いま、注文してきた」・・・やがて、小さな焜炉に土鍋をかけたものが、 はこばれてきた。中には大根と油揚げのみであった。 「出汁が鶏さ。ま、食べてごらん」「む・・・悪くねえ」
秋茄子と茶わん酒

[秋風二人旅]
梅安と彦次郎が彦次郎の女房の仇である無頼浪人を仕掛けた後に。

二人は茶わん酒をくみかわしている。 肴は、女中が寝しなにもって来てくれた秋茄子の塩もみへ、水芥子をそえたもの だけであったが、「こいつは、たまらなくうまい」と、彦次郎が舌つづみをうった。
松茸の蒸焼

[後は知らない]
梅安と彦次郎が仕掛けた前に伏見の松茸を堪能している。

「松茸は蒸焼にまさる風味はないとおもうが、本来ならば野外の、松林の中で焚き火をしてね、その熱い灰に入れた ほうがよい」「ふうむ。そんなものかね」 ・・・焜炉から火を引いたあとへ、宿で下ごしらえをしてくれた松茸を丸の まま紙へ包み、水につけてしぼりあげたものを入れて、これを蒸焼にしているのである。
菜飯と田楽

[秋風二人旅]
梅安と彦次郎が仕掛けに向かう途中での昼食である。

昼にはまだすこし早かったけれども、梅安と彦次郎が目川に入って、先ず目をつけたのが、菜飯田楽の「伊勢屋」 であった。「彦さん。ここはね、田楽の元祖だというよ」「へへえ・・・梅安さんは、何でも知っていなさるねえ」 豆腐に熱い味噌をつけた田楽で酒を飲みはじめた二人のほかに、昼前のこととて他の客はいなかった。
大根と浅蜊の鍋

[梅安晦日蕎麦]
梅安と彦次郎は、居間の長火鉢に土鍋をかけ、これに出汁を張った。笊に、 大根を千六本に刻んだのを山盛りにし、別の笊には浅蜊の剥き身が入っている。 
鍋の出汁が煮えてくると、梅安は大根の千六本を手づかみで入れ、浅蜊も入れた。刻んだ大根は、すぐさま煮えあがる。 それを浅蜊とともに引きあげて小皿へとり、七色蕃椒を振って、二人とも、汁といっしょにふうふういいながら口へはこんだ。