6. 魚の餌付け

 購入してきた魚は種類によって人工飼料をすぐ食べてくれるものと食べてくれないものに分かれます。 すぐに食べてくれる種類としてはスズメダイ類やベラ類があります。 一方、代表的な鑑賞魚であるチョウチョウウオ類やヤッコ類は食べてくれない方になります。 そのため、どうしても人工の餌に慣れさせる方法を知っておくことが事が必要に成ってきます。

◆海の中で魚は何を食べているのか◆
 海水魚の自然界での食性を確認するには海水魚図鑑を見るのが早道です。  手元に無い方は本屋さんでちょっとだけ立ち読みをして見てください。 魚によって、藻類、小型魚類、プランクトン、海生小動物(小型イソギンチャク、ゴカイなど)、サンゴのポリプ・・・・と多種多様です。 水槽内でもこれらの餌を与えつづける事が可能ならば敢えて人工飼料に変える必要はありません。 しかしながらそれは一般的には不可能なため、人工飼料に餌付けをする事が必要になってきます。

◆餌付けの考え方◆
 今ショップなどで売られている人工の海水魚の餌といわれるものは全て海水魚の餌としてある程度の品質を持っていると考えて良いと思います。 全ての餌に魚が食べる可能性があるという事です。 しかし、実際には一部の魚を除き、購入した魚にいきなり餌を与えてみても、まず食べてくれません。 飼育本に雑食性とか人工飼料を食べると紹介されている魚についてもです。 これは与えた餌を魚が食べ物と思っていないのだと考えると良いでしょう。 今まで海で食べてきたものと余りに形状や匂いが異なるからです (たぶん・・・)。 「お腹が減れば食べるようになるだろう」と考えて暫くおいていても、絶対に魚は食べません。 たとえガリガリに痩せて☆になろうとも魚は食べません。 この根性は凄いです。そうなる前に早めに人工餌が食べ物である事を理解してもらい、慣れてもらいましょう。

◆具体的な餌付け方法◆
 具体的な餌付け方法は概ね以下の三段階になります。

 @魚が食べる自然餌を与え、これに慣れさせる。
 A自然餌と人工餌を混ぜて与えこれに慣れさせる。
 B100%人工餌にする。


 @で与える自然餌としては、(活き)アサリ、(活き)ブラインシュリンプ、魚卵、魚肉、糸ミミズ、特殊人工飼料等がありますが、魚の趣向性が一番高い事および入手のし易さから(活き)アサリがベストと思います。 魚を購入した帰り道にはスーパーによって100円の (別に100円でなくても構いませんが・・・) アサリパックを買っていきましょう。 最近は季節を問わずこれが売られていますから楽になりました。

 さて、具体的な与え方ですが、水槽に入れた魚が落ち着いたら、買ってきたアサリの口を開け、そのまま水槽に静かに落とします。  魚は環境が変わってソワソワしてますから、何事も静かにおこない、アサリを入れたら水槽から離れて観察します。 水槽面に顔をくっつけてじっと見ているような事はしないでください。 それでも、離れた所から魚の様子をじっと観察してください。 魚は最初は知らん顔しているかもしれませんが、やがてアサリの匂いに誘われて周りを泳ぎ出し、顔を近づけて覗き込みます。 そして徐に突つき出します。 それが食べ物であると分かると勢い良くで食べ始めます 。 一部の特殊な食性の魚を除いて殆どアサリを食べます。 これで第一段階終了です。 アサリを食べていれば魚は痩せて死ぬ事はありません。 買ってきた活きアサリはパックの中では二三日しか活きていません。 死んだアサリを与える事は論外ですから、その前にアサリは水を切って冷凍します。 活きアサリを食べる事を覚えた魚は二三日後に冷凍アサリに代えても食べてくれます。 冷凍アサリを食べてくれない場合には面倒でもまた活きアサリを買ってきて与えてください。 なお、アサリは朝晩新しいものと代えます。 それ以上おいておくと水槽の中で腐敗してきますので注意します。
 上の画像は前回購入したヤリカタギが冷凍アサリを食べているものです。 因みにミスジチョウは全く何も口にしてません。 こちらは少しヤバイかも・・・。


 @でアサリを食べるようになったら、人工飼料をアサリに混ぜる事を始めます。 アサリでずっと飼育しても構わないのですが、やはり人工餌の方が楽ですし、総合的な栄養価も優れています。 その方法です。 他の魚に与えているのと同じ餌 (自分がメインで使おうとしている人工餌) を擂り鉢などを使って粉 (または芥子粒ほどの細かさ) にします。 これに冷凍しておいたアサリの身を包丁などで細かくミンチにしたものを用意します。 このアサリに最初は10%ほど粉にした人工餌を混ぜ込みます。 出来たものをアサリの貝殻いれて再び冷凍し、冷凍アサリの代わりにこれを与えるようにします。 魚は殆どの場合問題なく食べてくれます。 これを二三日繰り替えしたら、今度はアサリと人工餌の割合を30%にしてみます。 その後、人工餌の割合を増やしながら最終的には100%人工餌にします。 人工餌の割合を増やしていく途中で魚がその餌を食べなくなったら、アサリの割合を元に戻してやり直します。 魚の種類や固体差によって100%人工餌にするまでの期間は変わりますが、気長にやってみて下さい。 早いものでは1週間、遅いものでは三ヶ月掛かるものもあります。

 100%の練り餌を食べるようになったら、アサリを与える前に人工餌を直接水槽にいいれてみて下さい。 ここまできた魚なら少しずつでも口に入れるようになると思います。 口に入れるのを確認できたらそのまま直接人工餌を与えつづけてください。 一度人工餌を口にした魚はそのまま餌付きます。

(幾つかの参考事項)
 @を始める前に、最初に人工餌を直接与えてみてください。固体差によってそれを口にする魚も希に います。口にするようだったらそのまま餌を与えつづけてください。 餌付けの方法は私の
ここやhamacyanさんのHPにも詳しく書かれています。 hamacyan さんは採集と餌付けの第一人者です。 参考にしてください。

◆海水魚の食性◆
 観賞用の海水魚あるいは採集できる海水魚の中で餌付けが問題として出てくるのはチョウチョウウオ類とヤッコ類であると思います。 勿論、他にも餌付けが必要な魚はいますが、この2種について考えればほとんどの魚の餌付けに応用できると思います。 インディアンメロンバタフライフィッシュ:ポリプ食  

●ヤッコ類
 ほとんどの飼育書で「雑食性」と表示されます。 
●チョウチョウウオ
 チョウチョウウオの食性は以下の3種類が主なものです。
 ○雑食性
 ○プランクトン食性
 ○ポリプ食性

   雑食性は環形動物などの肉食であったり、海藻類の植物性だったり多種の食物を食べていることを示し、飼育においては比較的簡単に人工飼料を食べてくれる事を意味しています。
ブルーストライプドバタフライフィッシュ:雑食性 プランクトン食性は海中の動植物プランクトンを主に食べている事を示し、飼育においては同様に人工飼料を食べてくれる事を意味しています。
 ポリプ食性は主にサンゴのポリプを食べている事を示し、人工飼料を食べさせることが最も難しい事を意味しています。
○雑食性の代表
 トゲ、フウライ、アケボノ、ナミ、チョウハン、セグロ、スダレ、アミメ、ナミ、ミゾレ、etc
○プランクトン食性
 カスミ、
○ポリプ食性
 ヤスジ、ミスジ、トノサマ、ミカド、ウミヅキ、ハナグロ、オウギ etc   カスミチョウチョウウオ:プランクトン食

○固体差の話
 これまでは種類によっての平均的な話を書いてきましたが、これ以上に影響を受けるのが固体差です。 同じ種類の魚でも体の大きさなどにより餌付けに差が出てきます。 最初の餌に人工飼料をあげてみたらすぐに食べ始めるヤッコやチョウがいるのも間違いない事ですし、それとは逆に雑食性とありながらなかなかアサリを食べない魚もいます。 これをコントロールする事は出来ません。これは個体差です。 すぐ食べた魚を手に入れた場合はラッキーですし、逆の場合は不運で少しばかり大変かな〜くらいに考えましょう。

○隔離中の注意
 隔離して餌付けをすると白点病の発生が多くなるような気がします。 画像にあるアオタテジマbfも三日目くらいから白点病が出ました。 どうも限られた空間に入れられているとストレスが溜まる所為か病気がでやすいようです。 この場合には迷ってしまいます。 餌付けを優先するか病気治療を優先するかです。 私の場合には病気治療を優先します。 病気のままだと結局餌付けも旨くいかないからです。 隔離部屋から出し、水槽全体に魚病役を入れて様子を見ます。 餌はアサリの開いたものを水槽に落としてやります。 他の魚に食べられてしまう事が多いかもしれませんが、それでも少しずつでも口にしてくれます。 こうして病気を治してから再度餌付けをやり直します。

魚の餌付けは生死の分かれ道。 慌てずに・・・。