池波正太郎さんの小説が面白い理由は、その人によって色々あるので
しょうが、私自身は以下のようなことかなと思っています。
- ◎文章にテンポがある
文章に池波流のテンポがあって読みやすい。これは他の時代小説の文章と並べてみれば良く解ります。
一言で表現すると、「空白(改行)が多い」ということです。
この空白がテンポを生み出し、読み手に文章を読む際の煩わしさや疲れを感じさせません。
空白が無く、ダラダラと文字が連なる文章は、少なくとも、私には読みづらくてかないません。
- ◎会話表現が絶妙である。
これは、上記のリズム感にも関係していますが、会話が、会話として完璧に表現されています。読み手に
その会話をしている人物の口の動きから体全体の動き、そして、その場の空気の動きまでもを読み取らせてし
まいます。 これにより、私には、聞こえないはずの登場人物の肉声まで聞こえるような気がしてしまいます。
また、会話における「間合い」の表現が卓越しています。一連の言葉の流れを、
意識して切ってしまう。この一瞬の間が会話そのものに奥深さを与えています。これだけ会話を活き活きと
表現できる人は他にいないのではないでしょうか。
- ◎登場人物のが魅力的である。
これは池波さんの創造力やご自身の人柄にもよるのでしょうが、実に魅力的な
個性の有る人物が大勢登場します。これは、別に主役・脇役、善人・悪人に関係なくすべての登場人物、
もっというと出てくる犬や猫にまで言えるのではないでしょうか。
これらの人物を書き現す池波さんの筆力というのは、ものすごいと思います。
- ◎ストーリーが面白い。
代表作の100篇を超える鬼平犯科帳は「盗賊」と「盗賊改」の話という設定でありながら、各話が個性的です
し、医者でありながら金を取って人を仕掛ける「仕掛け人」シリーズなどは設定の発想がすばらしいと思います。
これらがすべてが一体となって池波さんの小説の魅力となっています。「全く他の作家には真似の
出来ない発想、創造力とそれらを活き活きと書き現す文章力」です。
これによって、
「何度読んでも面白い小説」が出来ているように思います。
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